慢性腎臓病の鑑別に尿検査の必要性を感じたトイプードルの一例 | 動物の医療と健康を考える情報サイト

今回は若い頃から持病をたくさん抱え、シニアになってからは腎不全とも闘いながらも頑張っている、15歳のチワワ女の子、ソラちゃんをご紹介しますね。 持病により1歳から投薬生活 ソラちゃんは1歳半からてんかん発作のためフェノバールと臭化カリウムというお薬をずっと飲んでいました。お薬を飲んでいれば発作は3ヶ月に1回位に抑えられていたそうです。そして6歳から僧帽弁閉鎖不全症のため血圧を下げる薬や、利尿剤を飲んでいたそうです。 持病を抱えながらも元気に過ごしていたソラちゃんですが、気管虚脱による咳がひどくなったため、2018年の冬にキュティアへ来院されました。 気管虚脱にも腎が関与? 膝などの関節の軟骨が擦り減るのと同じように気管も軟骨でできているため歳とともに弱り、ぺたんこにつぶれてしまうのです。物理的につぶれてしまった気管を元に戻すのは難しいのですが、軟骨の形成を助けてくれる関節用のサプリメントを飲ませると症状が改善することがあります。 また、東洋医学では咳は「肺」の気の逆流と考えます。気の流れを整えることで咳を鎮めることができます。そして深い呼吸をするためには「腎」の力も必要です。腎は骨、軟骨とも関係しているので腎の気を補うことも大切です。 ソラちゃんは鍼灸治療に加え、気の逆流を抑えてくれるホモトキシコロジーの注射をツボに打つ水鍼を定期的に行っていました。また血管を柔らかくし血流をよくすることで心臓の負担を減らしてくれる、「さんざしの実のシロップ」も飲んでいただきました。 尿素窒素(BUN)の値が上昇 夜間に咳が出てしまったりすることはありましたが、てんかんの発作はなく、元気に頑張っていたソラちゃん。ところが、2019年春の検診で急に腎臓の数値が悪くなっていることがわかりました。正常値が20前後の尿素窒素の値は122。正常値1. 0前後のクレアチニンの値は3. 4へと上昇していました。 まずは腎臓の負担になる利尿剤を飲むのをやめて、1日おきに皮下補液を始めました。すると一時的に尿素窒素の値は30へと下がりました。しかし、ここで気をつけなければいけないのが補液の量です。ソラちゃんのように心臓に持病を抱えていて血流が悪くなっている子は補液の量が多いとお水を処理しきれず、肺にお水が溜まってしまう肺水腫になる危険性があるのです。 なので補液は慎重に行わなければなりません。急に暖かくなってきた5月にソラちゃんもハァハァして肺水腫になりかけ、再び利尿剤を3日使ったところ、尿素窒素の値が130へと戻ってしまいました。補液の量は増やせないのでこのまま数値が下がらないと夏はこせないかも・・・、とかかりつけ医で言われ、その後は鍼灸治療の頻度を週に1回へ増やしました。 腎不全用の処方食は食べないので、ごはんは手作りのおかゆを食べていますが食欲もあり体重もキープできています。鍼灸治療の頻度を週1回に増やしてからは腎臓の数値は尿素窒素が80前後、クレアチニンが2.

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高齢のイヌやネコに多い慢性腎臓病。 血液検査で高窒素血症が見つかった場合、慢性腎臓病と決めつけて治療を行っていませんか? 特にBUNだけでなくクレアチニンが上昇している場合には、腎臓病と考えてしまいがちですが、血液検査だけで診断を決めてしまうと誤診をしてしまうケースも少なくありません。 今回は、高窒素血症と高カリウム血症から慢性腎臓病と診断されて転院してきたトイプードルについてご紹介いたします。 転院してきた高窒素血症と高カリウム血症のトイプードル 今回ご紹介する症例は、8歳の避妊済メスのトイプードルです。 この症例は、元気や食欲の低下のために他院を受診し、血液検査によって軽度の高窒素血症(BUN 38. 9mg/dL、Cre 2. 0mg/dL)、高カリウム血症(K 5. 2mEq/L)、CRPの高値(4. 7mg/dL)が見つかり、検査結果や経過から慢性腎臓病と診断されて点滴などを受けていました。 しかし、なかなか調子が良くならないため、セカンドオピニオンのために当院を受診しました。 当院での初診時には比較的元気そうではあったものの、お家ではぐったりと寝ている時間が長く、缶詰のフードを少し食べるだけで、体重も徐々に減少しているとのことでした。 当院での血液検査の結果、他院での検査と同様に軽度の高窒素血症と高カリウム血症を認めました。 同時に行った尿検査で、尿比重が1. 040と比較的高かったことから、アジソン病の鑑別のためにACTH刺激試験を行いました。 すると、刺激試験前後のどちらのコルチゾールの値も0. 2μg/dL未満の低値、という結果であり、アジソン病との診断に至りました。 フルドロコルチゾン(フロリネフ)とプレドニゾロンの内服により、元気・食欲の改善がみられ、徐々に調子は良くなりました。2週間の投薬後には、CRPも含め血液検査の数値はすべて正常値に戻りました(アジソン病でもCRPが上昇することがあり、病気のコントロールによって正常化する例がほとんどです)。 現在は、プレドニゾロン(0. 5mg/kg 5日に1度)とフルドロコルチゾン(0.

May 21, 2024, 11:50 am